*この記事は、カンボジア語の基礎①、②の続きです。まだ読んでいない方は、カンボジア語の基礎①、カンボジア語の基礎②からお先にお読み頂くことをおすすめします。
こんな疑問にお答えします。
●この記事でわかること●
- カンボジア語の発音はどう決まる?
- 発音に影響する記号
- 文章で使う記号
- 独立体母音字
- 数字
●私はこんな人です●
- フリーランスのカンボジア語講師・翻訳者
- 主に日本人向けにカンボジア語レッスン、動画講座の販売、難民関連の翻訳を行なう
- 東京外国語大学カンボジア語学科卒業
●学習のポイント●
この記事はカンボジア語の基礎①、②の内容を踏まえて、発音についてさらに詳しく解説していきます。
これがわかると、初心者の方であっても、カンボジア語の単語を見た時に「この単語はこの子音とこの母音がくっついているから、だからこの発音になるのか!」ということがなんとなくわかるようになるかなと思います。
この記事の内容を理解できれば、あとは市販の参考書を使ってご自身でどんどん単語や文法を独学していくことをおすすめします。
それでは、早速見ていきます。
カンボジア語の発音はどう決まる?
子音文字・脚文字・母音記号の組み合わせ
カンボジア語の基礎②でも解説しましたが、カンボジア語の単語は子音文字・脚文字・母音記号が組み合わさって単語ができています。
*まだ読んでいない方は カンボジア語の基礎①、②をお先にご覧頂ければと思います。
発音は子音文字で決まる
カンボジア語の発音を大きく決めるのが、子音文字です。
子音文字は次の表で見た方がわかりやすいので、この表を見て解説していきます。
この表は市販の本などを参考に作成しています。
これからカンボジア語を独学したい!という方には、ニューエクスプレスプラス カンボジア語《CD付》という本が、子音文字表も他の本に比べて最も見やすいため、特におすすめです。(もちろん他の参考書でも大丈夫です)
- 子音文字は、上の表のようにA子音とO子音という2種類に分けることができます。
表を見るとわかる通り、表の左上の「ក」であればA子音、下から2列目の「ល」であればO子音、一番右の列の「ណ」であればA子音となります。
- できれば、この子音文字表、脚文字表、母音記号表はニューエクスプレスプラスカンボジア語に書かれている表の方が詳しくより正確ですので、実際に学習していく場合はそちらの一覧を参照していただくことをおすすめします。
- また、できればニューエクスプレスの子音文字表・脚文字表・母音記号表は印刷して、常に手元に置いておいてすぐに見れるような状態で勉強することをオススメします。
発音の決まり方
「子音文字にはA子音とO子音がある」ということがなんとなく分かったところで、
実際にこのA子音・O子音と発音がどう関係するのか、具体的に例を挙げて見ていきます。
ここからは、カンボジア語の基礎②で使った単語と同じ単語を挙げて解説していきます。
●例1
ទា ティア 意味は「アヒル」
このទា ティアという単語を分解するとこうなります。
ទ | ា |
子音文字 | 母音記号 |
では、この ទា という単語は、なぜ ティア という読み方になるのでしょうか?
まず、この単語に使われているのは子音文字「ទ」と母音記号「 ា 」の2つです。
- まず、子音文字表で子音文字「ទ」がA子音なのかO子音なのかを確認します。
→先ほどの表を見ると、「ទ」はO子音だとわかります。 - 次に、母音記号の表を見て「 ា 」の箇所を確認します。
*下に載せたものが母音記号表です。左の上から2段目に「 ា 」がありますのでそこを見ます。 - 今回はទាの発音を調べたいわけですが、「ទ」はO子音ということがわかったので母音記号表の「 ា 」の行の青で囲った”O子音についた場合の発音”の欄を見ます。
- この表を見てわかるように、「ា」はO子音につく時は iˑə イア という発音になります。
- 「ទ」だけだとトー( t )と読みますので、「ទ」トー(t) +「 ា 」イア(iˑə) =で ទា ティア (tiˑə)と発音します。
*子音文字の読み方は子音文字の表を見て判断できます。
*上の母音記号表はカンボジア語の基礎①、②にも掲載しています。
*この母音記号表は市販の参考書などをもとに私が作成したものです。
つまり、発音を確認する手順は次の通りです。
- 発音を確認したい単語を見て、母音記号がどの子音文字にくっついているかを確認する
*母音記号が無い単語もあります。 - 子音文字の表で、その子音文字がA子音なのかO子音なのかを確認
- 母音記号の表で、①で確認した母音記号を探す。
- 母音記号が見つかったら、②の子音文字がA子音だったのであれば母音記号表の「A子音についた場合」(赤い枠線内)の欄を見て、②の子音文字がO子音だったのであれば母音記号表の「O子音についた場合」(青い枠線内)の欄を見ると、母音記号の発音がわかる
- 子音文字の読み方と④の母音記号の読み方を組み合わせると、その単語の発音がわかる
今のをふまえて、他の例も見ていきます。
●例2
កូន コーン 意味は「(人、動物、虫などの) 子ども」
このកូន コーンという単語を分解するとこうなります。
ក | ូ | ន |
子音文字 | 母音記号 | 子音記号 |
先ほどと同じ要領で確認していきます。
- 母音記号「 ូ 」は子音文字「ក」にくっついていることがわかります
- 子音文字表で見ると「ក」はA子音だとわかります
- 母音記号は「ូ」が使われています
- 母音記号表で「ូ」の欄を見ます。②で「ក」はA子音とわかったので「ូ」の「A子音についた場合」(赤い枠線内)の欄を見ると、oː オーと書いてあります。
- 「ក」はコー(k)と読むので、「ក」コー(k) +「ូ」オー(oː) でコーという読み方になります。
最後に「ន」ン(n) がつくため、コ(k)+オー(oː)+ン(n) で コーン (koːn) と読みます。
●例3
次は脚文字がある場合です。
ក្បាល クバール 意味は「頭」
単語を分解するとこうです。
ក | ្ប | ា | ល |
子音文字 | 脚文字 (子音文字បの脚文字) | 母音記号 | 子音文字 |
- 母音記号「 ា 」の前を見ると、子音文字「 ក 」の後ろに脚文字がついています。
*脚文字とは、子音文字が変形したものです。あくまでも形が変わっただけなので、読み方などは子音文字と同じです。
- 発音を知るには子音文字がA子音なのかO子音なのかを確認する必要がありますが、このように母音記号の前に子音文字と脚文字が続いている場合は、どちらを見てA子音・O子音と判断すれば良いのでしょうか?
答えは、次の通りです。
●発音を確認する場合、母音記号からさかのぼって一番最初にくる子音文字(脚文字)によって発音が決まります。ただし、「យ វ រ ល ឡ ង ញ ណ ន ម」には発音を決定する力がありません。(これらの脚文字でも同様)
●母音記号からさかのぼった時に最初に当たる子音文字(脚文字)が「យ វ រ ល ឡ ង ញ ណ ន ម」のどれかだった場合、その文字には発音を決定する力(決定権)がないので、A子音かO子音かが決められません。よって、その場合はそのさらに前の子音文字を見て、A子音がO子音を判断して発音が決まります。
少しわかりにくいですが、次の通りです。
- ក្បាលクバール で使われている脚文字は子音文字「ប」が変形したものです。
- 母音記号「ា」からさかのぼると、最初に当たるのはこの脚文字で→その前に行くと「ក」に当たります。
- 先ほどのルールでいけば、この脚文字「ប」は発音の決定権がある文字ですので、この「ប」がA子音なのかO子音なのかを確認すれば、「ា」をどう読めば良いのかが決まる、ということです。
- つまり、「ប」は子音文字表を見るとA子音。
- そして母音記号表の「ា」のA子音のところを見ると aː アー と書かれています。
- よって、「ប」バー(b) + 「 ា 」アー(aː) でバー(baː) と読むことになります。
- あとは最初の「ក」k と最後の「ល」l をつけて、k +バー(baː) +l = クバール(k’baːl) と読む、という風になります。
●例4
ភាសាខ្មែរ ピアサー・クマエ 「カンボジア語」
↓分解するとこうなります。
ភ | ា | ស | ា | ខ | ្ម | ែ | រ |
子音文字 | 母音記号 | 子音文字 | 母音記号 | 子音文字 | 脚文字 (子音文字មの脚文字) | 母音記号 | 子音文字 |
O子音 | 母音記号表のO子音の欄を見る | A子音 | 母音記号表のA子音の欄を見る | A子音 | (O子音) *មには発音の決定権がない | 母音記号表のA子音の欄を見る | (O子音) *រは最後にきた場合は読まない |
p | iˑə イア | s | aː アー | k | m | ae アエ | (r) |
- ែ の前の脚文字は子音文字「 ម 」の脚文字です。
「 ម 」は発音を決定する力を持たない文字ですので、これは飛ばしてそのさらに前の子音文字「 ខ 」で「 ែ 」の発音を判断します。
「 ខ 」はA子音ですので、母音記号表の「 ែ 」の「A子音についた場合」を見ると、発音は ae アエ だとわかります。
- 「 រ 」は一番最後についた場合は発音しません。
*子音文字の表を参照。
●例5
ជម្រាបសួរ チョムリアップ・スオ 「おはようございます、こんにちは、こんばんは」
↓この ជម្រាបសួរ という単語を分解するとこうなります。
ជ | ្រ | ម | ា | ប | ស | ួ | រ |
子音文字 | 脚文字 (子音文字រの脚文字) | 子音文字 | 母音記号 | 子音文字 | 子音文字 | 母音記号 | 子音文字 |
O子音 | O子音 | (O子音) *មは発音を決定する力がないのでこれは飛ばす | 母音記号表のO子音についた場合の欄を見る | A子音 | A子音 | 母音記号表のA子音についた場合の欄を見る | (O子音) *រは最後にきた場合は読まない |
c | m | r | iˑə イア | p | s | uˑo ウオ | (r) |
例4と同様、最後の「 រ 」は発音しません。よって、「チョムリアップスオロ」 などとはならず、「チョムリアップスオ」 と発音します。
母音記号も脚文字もない場合は?
カンボジア語の単語は、すべての単語に母音記号や脚文字が必ずついている訳ではありません。
次のように、母音記号も脚文字もつかない単語もあります。
ក コー 「首」
「ក」だけで首 という意味があり、コーと読みます。
↓母音記号表にも【母音記号が無く子音だけの場合】と書いてあります。
何もつかない場合はオー と読むということです。
つまり、ក コ( k )+ オー で ក コー という発音になるのです。
その他の例
ស ソー 「白い」
ច チョー 「戌(いぬ)」 ←干支などの戌(いぬ)です。通常の犬(いぬ)はឆ្កែ チカエ と言います。
発音に影響する記号
カンボジア語には、次のようにA子音の文字をO子音に変えたり、逆にO子音の文字をA子音に変えたりする記号があります。
また、「この記号がついたらこの文字は読まない」という記号などもありますので、もしも単語に記号がついていたら、読み方が変わるのかもしれない、と思ってください。
*発音に全く影響しない記号やただついているだけの記号もあります。
記号 | 意味 | 具体例 |
---|---|---|
់ | 前の母音が短くなる | សក ソー(ク) (樹皮の皮を)むく、(ヘビなどが)脱皮する សក់ ソッ(ク) 髪 |
៊ | A子音→O子音に変わる | សាប៊ូ サブー 石鹸 |
៉ | O子音→A子音に変わる បについた場合は、A子音「p」を表す | ប៉ុន្តែ ポンタエ しかし |
ុ | ៊ や ៉ の代わりに子音の下につく。 (上に ិ ី などがあるとかぶってしまい書けないため) | មុឺន ムアン 万 |
៏ | 同じ音で違う意味の単語があるため、区別するためにつける。 *発音には関係ない | ក コー 首 ក៏ コー ~も (例)ខ្ងុំក៏ទៅដែរ クニョム・コー・タウ・ダエ 私も行きます。 |
៎ | 同じ音で違う意味の単語があるため、区別するためにつける。 *発音には関係ない | ណា ナー どれ、どこ ណា៎ ナー ~ね(~してね、~だよと念を押す感じ) |
៌ | រが変化したもの。 *発音には関係ない | ពណ៌ ポア 色 |
៍ | これがついている文字は発音しない | អារម្មណ៍ アーローム 意識、感情、感想 (例)ចាប់ អារម្មណ៍ チャッ(プ)・アーローム 関心を持つ |
ៗ | 同じ語を繰り返す | ប្រុសៗ プロホプロホ 男性(たち) ស្រីៗ スライスライ 女性(たち) យឺតៗ ユーッ(ト)ユーッ(ト) ゆっくりゆっくり |
។ល។ | 日本語の「など」を表す 読み方は ロー | (ちょうど良い具体例がなかったので、見つかったら掲載します🙇♀️) |
文章で使う記号
- 日本語では、文章の区切りで「、」をつけますが、カンボジア語では「、」のような記号は使いません。
基本的には単語と単語も全てつなげて書き、「ここが区切りですよ」と示したいときはスペースをあけて書きます。
- 「、」はありませんが、最後の「。」やカギカッコ「」を表す記号はカンボジア語にもあります。
日本語 | カンボジア語 |
---|---|
、 | 記号はなし。スペースを空ける。 |
。 | ។ (上でご紹介した「ៗ」と似ていますが、「ៗ」は繰り返し記号です) |
「」 (引用) | ៖ (この後ろに引用の内容を書きます) |
↓こんな感じで使われます。
*画像は在カンボジア日本大使館のFacebookの記事を勝手にスクリーンショットさせて頂きました🙇♀️
- 画像1枚目の「 ។ 」は最後の「 。」を表します。
- 画像2枚目の「 ៖ 」から後ろは引用や「」(カギカッコ)の内容を表します。
独立体母音字(どくりつたいぼいんじ)
カンボジア語の文字の中には、次のような独立体母音字(どくりつたいぼいんじ)と呼ばれる特殊な文字もあります。
*名称だけ見ると難しそうですが、内容はとても簡単です。
独立体母音字 | 対応する文字 | 具体例 |
---|---|---|
ឥ | អិ エ、エイ | ឥឡូវ 今 |
ឦ | អី エイ | ឦសាន エイサーン 北東、シバ神 |
ឧ | អុ オ、ウ | ឧទាហរណ៍ 例 |
ឱ | អ៊ូ ウー | ឱកាស アウカッ(ハ) 機会、チャンス មាន ឱកាស នឹង~ ミアン・アウカッ(ハ)・ヌン~ ~するチャンスがある |
ឫ | រឹ ル | ឫស rh 根 |
ឬ | រឺ ルー | ឬ 〇〇または〇〇 |
ឭ | លឹ ル | ឮと同じ |
ឮ | លឺ ルー | ឮ ルー 聞こえる、聞き手の意思に関係なく耳に入ってくる |
ឯ | អែ アエ | ឯ アエ 場所を示す ~に |
ព្ធ | អៃ アイ | ព្ធសូរ アイソー 祝福、強力な ←? ⚠️オンライン辞書に出てきたのだけなので曖昧です |
ឪ | អូវ ア(アとウの間)ウ | ឪពុក アウポック 父 |
ឲ្យ | អោយ アオイ | ឲ្យ アオイ 与える、~させる |
- たとえば、一番上の「 ឥ 」という独立体母音字があるのですが、これは「 អិ 」のことを表しています。 អិという単語は、អという子音文字の上に ិ という母音記号がくっついてできています。
つまり、本来は子音文字+母音記号で書ける単語を短縮させたというか、子音文字+母音記号で書ける単語を1つの文字で表したものが独立体母音字なのです。つまり、អិ=ឥ です。
- カンボジア語を書くときには常にこの独立体母音字を使うと言うわけではなく、決まった単語にのみ使われています。
- 上の表で具体例にあげた単語は、基本的にいつもこのつづりで(独立体母音字で)書かれていますが、ときどき子音文字+母音記号を使って書かれている場合もあります。
カンボジア語学習を始めたばかりの方は、独立体母音字は無理に暗記したり書けるようになる必要はありません。出てきた時に読み方を調べて徐々に慣れていけば特に問題ないかなと思います。
数字
数字については以下で解説しています。
ここでは、カンボジア語の数字がどんなものかなんとなく理解できればOKでして、数字の言い方を覚えたりする作業は後回しにしてもOKです。
まとめ
カンボジア語の基礎①、②、そしてこの記事でカンボジア語の文字・発音の基礎は完了です!
さらにカンボジア語を学びたい方へ
文字のしくみがなんとなくわかったところで、次は文法学習に入ることをおすすめします。基本文型は以下で学習できます。
参考:私古谷によるカンボジア語オンライン講座も行なっております。無料メルマガではカンボジア語講座や学習に役立つ情報をお届けしています。登録はこちら
子音文字とか母音記号がどういう風にくっつくのかはなんとなく分かったけど、発音がよくわからないから解説して欲しいです。具体的に、どの子音文字とどの母音記号がくっついて、どういう発音になるの?あと、「 ៊ 」とか「 ។ 」の記号についても使い方を詳しく知りたいです。